かつてロサンゼルスのモントリオールに住んでいた建築家が、亡くなった妻と過ごした思い出の家を離れ、新たな生活を求めてフロリダ州ゲインズビルに移り住んだ。
2018年、著者は30年間連れ添った妻、キャシーを乳がんで失い、その日が自分の誕生日であることに運命を感じた。
彼はキャシーとの間に25歳の娘、ローラをもうけ、山の中腹に位置する1926年の「ハリウッド・エクレクティック」様式の家で家族の生活を築いていた。この家は、ハロウィーンの時期には子供たちに「魔女の家」と呼ばれた。
キャシーが亡くなった後、ローラがチューリッヒ大学に通い始めたこともあり、著者はその大きな家に一人で住むことに不安を感じていた。
思い出が詰まった家は、彼を慰める一方で、喪失感をもたらしていた。
Match.comを通じて数回デートをする機会があったが、特にサンタモニカから来た女性との関係は特別だった。
2年間のデートの後、彼女は自由とスペースが必要だと考え始め、著者は心の傷を癒し、新たな道を歩むことを決意した。
ある静かな夜、ソファで一人過ごしていると、もうこの大きな家に一人で住む理由はないと気づいた。彼は、家を売り、グレンデールのYMCAに8フィート×12フィートの部屋に移った。
それから3ヶ月後、著者は夕食から帰る途中で歩道の亀裂につまずき、膝の皿を骨折してしまった。
翌朝、ローレラに連絡を取ったところ、彼女はYMCAでの生活を続けることが不可能だと強調した。
その後、ローレラが「優雅なシニアライフ」を提供する場所を見つけてくれたが、その平均年齢は85歳だった。
69歳の著者には、共通の参照軸がないことを実感した。素晴らしい人たちがいたが、長期的な住まいとしては相応しくないと感じた。
ある日、ダイニングルームで、グレイからホワイトへの短い髪の女性、ゲイルと出会った。彼女は柔らかい声といたずらっぽいウィットで、著者はすぐに惹かれた。
彼女の母親が103歳で亡くなったとき、ゲイルはその手続きを行うために訪れていた。
葬儀の際、彼女はハリウッドヒルズのフォレストローンで一羽のハトを放ち、その姿が消えるのを見守った。
ゲイルは自らを無神論者と定義し、著者はカトリックの信者であるが、彼は二人に共通の信仰が必要だと考えていた。
しかし、彼との関係の中で、自分の信念を持つことが大切であり、共有することが必ずしも改宗を意味しないと理解した。
ゲイルは、よく眉をひそめるが、それは視力が悪く、眼鏡で見えにくいためだ。
彼女は問題を大きく捉える傾向があり、彼は「それは問題なのか、可能性なのか?」と応じる。笑い合う瞬間が多く、著者は時折、彼女の耳の後ろにキスをして喜びを分かち合った。
二人は親密さを増していったが、ゲイルはフロリダ州ゲインズビルに帰らなければならなかった。
著者は彼女を訪れるために、一ヶ月、二ヶ月間、学校を離れてフロリダに滞在した。
数週間前、ゲイルはロサンゼルスに飛び、著者の持ち物を小さなフィアット500に詰め込んで、国道を横断する旅に出た。
フランク・ロイド・ライトのタリエセン・ウエスト、ニューメキシコ州のホワイトサンズ国立公園、フォートワースのキンベル美術館を訪れ、それぞれの体験を共有することで距離を縮めた。
その中でも、アーカンソー州のソーンクローン礼拝堂が、彼らにとっての聖別となったようだ。
ロサンゼルスは愛してやまない街であるが、愛情がないからではなく、彼女との関係があったからこそ移ったのだと彼は気付き、変化に心を開くことの大切さを認識した。
ゲイルと共にフロリダのゲインズビルで生活し始めた著者は、自身の膝が折れ、ゲイルの母が亡くなったという奇妙な流れがどのように二人を一つのテーブルに導いたのかを考え続けている。
「神は細部に宿る」とは著名な建築家の言葉だが、関係にも当てはまるのかもしれない。
初めてゲイルの家に訪れた際、著者は彼女のダイニングチェアに腰を下ろしたところ、座面が壊れてしまった。
ゲイルは「もっと静かに座ってもらえますか?」と頼んだ。
著者は、自分が他の椅子に座るときよりも硬く座っていたとは思わなかったが、その言葉を受け入れ、もしかすると自分自身が硬すぎたのかと振り返った。
この「愛の神秘」がその籐の穴にあるのかもしれない。
画像の出所:latimes