新たな写真集『ジャズ喫茶:日本のリスニング文化の魂』が、写真家の草野勝政によって出版されました。この本は、ジャズ喫茶として知られる日本独自のジャズカフェの存在を文書化したもので、親密なインテリアデザインが特徴で、リスニングスペースとしての役割を果たしています。
本書は、ジャズ喫茶が持つ高忠実度な環境への関心が再燃している今、出版されました。草野は、15年以上にわたってこれらの空間を撮影し、インスパイアリングなインテリアや文化的アーカイブとしての側面を示しています。
『喫茶』は日本語で『カフェ』を意味し、草野の撮ったジャズ喫茶の空間は、リスニングのために設計された特別な場所であることがわかります。
草野の作品において、ジャズ喫茶の建築的な特徴が浮き彫りになります。多くの場合、部屋は薄暗く、レコードの棚に囲まれ、スピーカーシステムが空間の配置を決定しています。座席は社会的交流よりもサウンドシステムに向けられており、建築・家具・音響が一体となったリスニング体験を反映しています。
アーティストのデボン・ターナブルは序文で述べています。「外から見ると、普通の喫茶店のように見えるかもしれない。しかし、扉を開ける瞬間、ヴィレッジ・バンガードやバードランドの精神に運ばれるのです。」
草野が捉えたジャズ喫茶のインテリアは、オーナーの個人的な趣味や技術的知識に基づいています。バーカウンターやテーブル、ブースはしばしば大型スピーカーや真空管アンプ、リール・トゥ・リールデッキを中心に設計されており、機材が建築の一部となっています。木のパネルの重みやタバコの煙のパティーナ、低い天井は、音楽に没頭するための親密な空間を構成しています。
ターナブルは「各喫茶店は深く個人的な創作物であり、オーナーの独自のサブシグネチャーが反映されている」と指摘し、デザインの決定の重ね合わせが、このタイプの店舗に全般的に独特でありながら一貫性のある雰囲気を生み出すことを強調しています。
ジャズ喫茶は、日本の戦後に登場し、1960年代から1970年代にかけてそのピークを迎えました。当時、輸入レコードは少なく、ライブ・パフォーマンスも稀でした。これらのカフェは文化的伝達の場となり、日本のミュージシャンとリスナーが新しい録音に出会う場としての役割を果たしました。
草野の書籍は、ジャズ喫茶が特定の文化運動の建築的な具現化であることを示しており、デザインが社会的および教育的な役割を果たす場でもあったことを強調しています。
多くのオリジナルカフェは閉店しましたが、草野の写真は新しいオーナーによる新たな店舗も記録しています。彼の作品は、リスニングを中心に構築されたジャズ喫茶のテンプレートが、現代のデザイナーやリスナーに影響を与え続けるであろうことを示唆しています。
画像の出所:designboom