東台湾の森林で、考古学者たちを数十年にわたり悩ませてきた疑問に答えるため、科学者たちのチームが立ち上がった。
現代の道具やナビゲーション機器なしで、古代の人々はどのように南日本の孤島にたどり着いたのか?
これを解明するために、東京大学の教授・海夫祐介が率いる研究チームは、日本と台湾の研究者と共に、古代人類の最初の海を渡る旅を再現する壮大な実験に取り組んだ。
彼らの旅は、台湾東部から日本の与那国島までの約225キロメートルの遠洋航海で構成されている。
この実験では、3万年前の石器のレプリカを使った7.5メートルの丸木舟を使用し、本物のように忠実な再現を目指した。
古代技術と現代科学の融合
丸木舟の建造は2019年に始まり、再現された旧石器時代の斧で伐採した一つの日本ヒノキのログを使用している。
そのログは、東京の国立科学博物館での公開展示で手作業で掘り進められた。
参加した職人の雨宮邦宏は、動物の皮で作られた衣服を着用し、伝統的な木工作業技術を披露した。
沖縄出身の女優・三津島光も、この彫刻のデモンストレーションに参加。
彼女はこの努力の象徴的な意義についてコメントし、 「トランクが少しずつ掘り進められていくにつれて、それを作り出した人々の記憶が徐々に残されていくようです。」 と語った。
完成した丸木舟には「杉目」と名付けられ、オープンシーの横断を生き抜くために必要な仕様に設計された。
直感だけを頼りに海を渡る
2025年、研究チームは「杉目」を東シナ海に投入し、初期人類の移動ルートを再現することを目指した。
地図やナビゲーション機器の助けを借りずに、太陽、星、海のうねり、そして直感だけに頼って paddling を6時間以上続けた。
その結果、台湾東部を出発し、与那国島に無事到着した。
航行中の視界は限られており、研究者たちは初期人類が高度な航海技術を持っていたことを結論づけた。
海夫は、「これらのカヌーは、渡るのに十分な速さと耐久性があることが分かりました。しかし、それは物語の半分にすぎません。あの初期の開拓者たちは、全員が経験豊富なパドラーであり、未知の世界を探検する強い意志を持っていたはずです。」と述べた。
シミュレーションによる古代の戦略の解明
物理実験をサポートするため、チームは数百の仮想シミュレーションを行った。
これらのモデルは、古代の海の状況を考慮に入れ、さまざまな出発地点、季節、パドリング戦略を検証した。
シミュレーションでは、北台湾から出発することが成功率を高めることを示した。
重要な発見は、目的地に直接向かうのではなく、わずかに南東に角度を付けることが重要であるということだった。
この調整は、世界で最も強力な海流の一つである黒潮に対抗する助けとなった。
「黒潮に入ると、無目的に漂うしかないと思っていましたが、シミュレーションの結果は私が想像していた以上のものでした。」と、JAMSTECの海洋学者・張ユ−リン博士は述べた。
初期人類の探索に関する考え方の再考
この実験は、初期現代人類がカヌーを使って日本列島に移動できたという仮説をサポートしている。
考古学的証拠、例えば遺物や骨格の証拠だけでは不十分であり、海が物理的な痕跡を消去してしまう傾向があるためである。
そのため、研究チームは実験考古学に目を向けて、これらの空白を埋めることにした。
画像の出所:dailygalaxy